【社寺巡礼】10年に一度の大開帳 迦葉山

社寺巡礼

ネット講釈師、普徳亭大崇でございます。


上州名物何よと問えばかかあ天下とからっ風
おっとまだある利根川の水の流れを遡りゃ
妙義榛名の峰続き赤城の山の吹きおろし
坂東太郎が利根川の流れで産湯を使いました
小松五郎吉兼が守り本尊馬庭の念流
腕が免許で度胸が自慢
打てば響くよ漢の胸に
千両万両の音がする
上州生まれの国定忠治
ニッコリ笑えば人を斬る


 歌の文句に歌われました国定忠治の故郷、上州は群馬県。その群馬県は沼田市にございます迦葉山というお寺で 10 年に一度大開帳が行われているとのことで、こりゃあ行かねぇと先祖の位牌に申し訳が立たねぇというわけで行ってまいりましたよ、自転車で。といいますのもこの迦葉山結構な山の中にございまして、最寄り駅の沼田駅から 10 と 6 キロ(約 16 ㎞)も離れておりまして、バスも山の麓までときてる。それに加えて私はサイクリストというとおこがましいですが、自転車好きときてる。こりゃもう自転車だなというわけでございます。

(これは迦葉山ではなく伊香保に行った時)

沼田城から快適なサイクリング

 さて、自転車と申しましても家からというのは流石に遠すぎますんで、沼田駅まで輪行してホテルで一泊してから翌日に迦葉山へ行こうという寸法。折角沼田に来たんですから、直接向かわず沼田城址にもちょいと足を延ばしてみましょう。沼田城は、真田左衛門尉幸村こと真田信繁の兄、真田信之の居城でございます。春ということで藤なんぞ咲いており、まことに良いところでございました。

 そんな沼田城を後にしていよいよ迦葉山へと向かいます。この迦葉山への道中というのもまたいいもんで、田植え前の水を張った田んぼや畑、菜の花なんぞを両手に眺め、時折聞こえくる「ホーホケキョ」という鶯の声、まことに気持ちのいいもんで、どれくらい気持ちが良いかと申しますと、道中の写真を撮るのを忘れるくらい。ほんとによかったですよステレオタイプな春の中、自転車を漕ぐのは。

険しき山道

 そんなこんなで、やってまいりました迦葉山…の麓。ここからいよいよ山道に入っていくわけでございます。最初は農道のような道がだんだんと木々に囲まれ、勾配もきつくなっていよいよ山道へと打ち変わって行く。

 途中、馬手の側を眺めますと見えてまいりますのが山門。寺の入口でございますが、先はまだまだございます。

 ヒイヒイ言いながら更に登ってまいりますと、カーブの途中に現われるのが慈愍門。石の仁王尊がドンッと並び立っております。徒歩で来られた方はこの先の道を行きますが、私は自転車なもんでカーブを曲がって登ってまいります。

 もうここまでで心臓バクバクですが、ひょいと見るとこんな注意書きが。

これはこれでまた別な理由で心臓がバクバクしそうです。

 これでまだ半分ほどだからたまらない。なんたってこの迦葉山、おおよそ 900m の標高に位置してるときてる。1 番軽いギアで九十九折りの道を登るのの辛いの辛くないのって。写真をご覧くださいまし、これでもほんの一部でございます。

迦葉山龍華院弥勒護国禅寺

 それでもペダルを漕いでまいりますと、弓手に大きな観音像が見えてまいります。ここがゴールでございます。

 迦葉山は正式名称、迦葉山龍華院弥勒護国禅寺かしょうざんりゅうげいんみろくごこくぜんじという曹洞宗のお寺でございます。その歴史を尋ねてみれば、平安の御世は嘉祥元年、人皇 50 代桓武天皇の皇子、葛原一品親王の発願により、比叡山三祖の慈覚大師円仁を招きまして、天台宗のお寺として創建されました。時経まして室町時代は康正 2 年、天巽慶順禅師は当時迦葉山の住職であった慈雲律師の高徳を慕い来山いたしました。天巽禅師の学識、人徳に感得しました慈雲律師、開山以来の宝燈を天巽禅師に譲りまして迦葉山は曹洞宗のお寺となりました。
 さてこの天巽禅師に中峯という童子が随身しておりました。この中峯、くるくるとよく働き寺院の造営に大変貢献しました。さらに、岩山の上など到底人力では行けないような場所まで修行者を導くなど神通力を持っており、十年一日の如く禅師に師事しておりました。さらにさらに、なんと何年経っても容顔変わることがなかったともうします。天巽禅師が二世大盛禅師に住職の座を譲られるや「吾、迦葉尊者の化身にて己に権化化業は終わった。よって今後は永くこの山に霊し末世の衆生の抜苦与楽せん。」と誓願して案山峰より昇天され、その後に天狗の面が残されていたともうします。
 以来、迦葉山では、願掛けのため天狗面を借りて帰り、次にお参りする機会に借りた面に新しい面を添えて寺に納め、また別の面を借りてくるという習わしができたともうします。

 そんなわけで、境内はいたるところに天狗の像や天狗の面があります。階段を登った先にある狛犬代わりの狛天狗の像にはじまり、正面の中峯堂の前には天狗の面、極めつけは中峯堂の拝殿内、大量の天狗の面と巨大な天狗の面。高さ 6.5m、鼻の長さ 2.8mとまさに桁違い。これが見れただけでも苦労して来た甲斐があるというもの。

狛天狗 向かって右が大天狗 反対が小天狗
巨大天狗面

中峯堂の大開帳

 さていよいよ今回のメインイベント、大開帳へとしゃれこみます。迦葉山の大開帳は、中峯堂の奥殿が拝観できるというもので、10 年毎に行われており、まさに今年令和 7 年がその10 年目にあたるというわけでございます。とはいえ、単にお堂に入れるというだけなら群馬の山奥までまいりません。この中峯堂なかなか特殊な構造となっとりまして、天狗の面がある拝殿から一旦出て、すぐ後ろの外陣(ここまでは普段から拝観可)に入り正面を見ますとこはいかに、祭壇がずーっと上の方まで続いております。

 中峯堂、一見すると普通の伽藍のようですが、実をもうしますと山の斜面に伽藍が建っており、1 番天辺が奥殿となっとります。奥殿と外陣を結ぶ部分には段々状の祭壇が設けられ、両側には奥殿に至る階段がありこれを大階段ともうします。普段は僧侶しか入れないこの奥殿と大階段に、参拝客も入れるというのが 10 年に一度の大開帳でございます。

斜面に沿って建てられた伽藍

 それでは奥殿へと参りましょう。残念ながら大階段から先は撮影禁止。どのような様子かともうしますと、大階段は弓手側が登りで 50と 2 段、馬手側が降りでこれも 50 と 2 段、しめて 108 段の階段となり、これは煩悩の数。大階段を登り降りすることで煩悩消滅の利益があるとかないとか。祭壇には様々な供物や仏花が供えられており、上には巨大な提灯がぶら下がっております。さらに上部中央は、紅白の細長い布が下がっており、御本尊の左手に結ばれていまして、反対側が拝殿まで続いております。普段は拝殿内でこの布に触れて、御本尊と御縁を結ぶということになっております。そんな大階段を進みますと気分も高まってまいります。いよいよ御本尊とご対面、天狗の姿をした中峯、中峯尊が御本尊でございます。御本尊自体はさほど大きくありませんが、大階段という空間、10 年に一度という特別性、それらが相まりましてなんとも有難く感じられました。

その他の見どころ

 迦葉山には中峯堂以外にも見どころがございまして、天巽禅師が修行を行ったといわれる和尚台かしょうだいというものがございます。和尚台は、言ってしまえば岩場なんですが、途中には胎内潜りなどもあり、迦葉山にとって重要な場所でございます。和尚台へは中雀門という門、といっても渡り廊下みたいな感じですが、こいつを潜った先に和尚台がございます。それではいよいよ満を持して和尚台に…行きませんでした。分かっております。皆さん不満が溜まってることでしょう。ただ、私も尿酸が溜まってるんでございます。しかも和尚台へのルートは完全な山道。所謂道無き道というヤツでございます。900m の高さまで自転車を漕いだ後、本格登山は流石にキツい。どうかご容赦くださいまし。

道なき道な山道
遠すぎて案内図に収まらない和尚台

結び

 日本には凡そ 7 万と 8 千のお寺があるといわれております。そんな数あるお寺の中でも、天狗に囲まれ 10 年に一度、大階段の大開帳を行うのはここ迦葉山龍華院弥勒護国禅寺だけ。令和 7 年の大開帳は 5 月 28 日までですが、他にも見どころのあるお寺ですんで、是非一度ご参拝して見てはいかがでしょうか。以上、一記事の書き終わりといたします。

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